エンタメ業界編まとめ:エンタメ大手6社は、そろって「IP企業」へ向かっている
ゲーム機を普及させ、収益性の高い自社ソフトを何本も売るという、というのが基本モデルです。
現在の注目は、最大の弱点だった「ハードの世代交代」を、世界で4億を超えているNintendo Accountで乗り越えようとしている点です。
Switch 2ユーザーの84%が旧Switchからの移行組で、これまでのハードのように顧客を作り直すのではなく引き継ぐ形を目指しています。
コナミ
ゲーム事業が利益の9割を稼ぐ会社ですが、一般的なゲーム会社ほどヒットに左右されないのが特徴の企業です。
eFootballなどの長期の課金収益を得られるゲームなど、メタルギアやSILENT HILLといった過去IPの再活用で、継続的に稼ぐ企業となっています。
こういった取り組みに加えて、デジタル化の影響もあり利益率は、2023年3月期の22%から2026年3月期には35%まで上がっています。
ゲーム企業の中では今後も安定した業績が期待される企業です。
バンダイナムコ
1つのIPをゲーム・玩具・カード・映像・店舗へ多面展開する「IP軸戦略」を軸に成長しており、年間600以上のIP、4万点以上の商品を扱っています。
この成長の象徴は自社IPのガンダムで、グループ売上は2019年3月期の793億円から2026年3月期には2543億円へ拡大しています。
IP軸戦略で安定成長するトイホビー事業に加えて、ゲームの大型ヒットが上振れ要因となっておりゲームのヒットが生まれるかもポイントとなっています。
サイバーエージェント
広告で売上を、ゲームで利益を稼ぎつつ、10年投資し続けたABEMAがついに黒字化した状況です。
ゲームも長期コンテンツや複数タイトルで以前より安定して稼げるようになっており、堅調な業績が期待できる状況となっています。
そして今は広告・ゲーム・ABEMAというこれまで注力してきた事業の強みを生かし「IP企業」へ変わろうとしています。
自社IPの成長だけでなく他社IPの確保も期待される状況で『映画ちいかわ』のアニメ制作と『ちいかわぽけっと』のゲーム開発を同じグループで手がけたのは象徴的です。
一方で、IP展開には海外が重要ですが、サイバーエージェンは海外事業の規模はそこまで大きく無いため海外展開には課題があると考えられます。
東宝
主力の映画事業では製作・配給・興行を一体で持つ垂直統合が強みで、国内映画の配給シェアは2025年で57.9%と圧倒的です。
そこに、ストック性の高いIP・アニメ事業(ゴジラなど)と、安定した不動産事業が乗る三層構造になっています。
ヒットで変動する映画を、ストックが下支えする形へ移りつつあります。
オリエンタルランド
日本最大のテーマパーク企業でありコロナ前を上回る業績となっています。
その要因は入園者数ではありません。
むしろ入園者はピークより500万人以上少ないままです。効いているのは、ゲスト1人当たり売上高の増加で2019年3月期の1万1815円から2026年3月期には1万8403円へ約1.6倍になっています。
「客数の最大化」から「体験価値×単価」への転換が上手くいっており高収益化しています。
今後はパークの拡張やクルーズ船によるパーク外への拡張によって体験価値を維持したまま、客数の増加も図り拡大を目指しています。
それでは、ここからは総じてどのような変化が起きているのかを見ていきましょう。
変化①:すべてが「IP企業」へ変化つつある
一番大きいのは、各社ともIPを保有・活用し、ゲーム・アニメ・映画・グッズ・イベント・施設へと多面展開する、という戦略を重視していることです。
バンダイナムコはゲームも玩具も映像も、サイバーエージェントは広告もアニメ制作も配信も、東宝は映画もアニメも手がけています。任天堂やコナミもIPを活用しイベントやテーマパークなどを行っています。
かつては「玩具メーカー」「映画会社」と一言で説明できた企業が、いまはどれもIPを起点にした複合企業になっており業界の領域は流動的になっています。
変化②:ビジネスが「フロー」から「ストック」へ
2つ目は、収益の性質そのものの変化です。
かつてのエンタメは、作品を作って売り切る「フロー型」が基本でした。
ですがデジタル化・配信の普及で、追加で1本売るコストが小さくなり、過去作品が長く売れ続ける「ストック型」の要素が強まっています。
コナミの利益率上昇(22%→35%)はまさにこれですし、東宝ではアニメ制作を始めたことで過去作を頻繁にみられるようになり、配信収入に占めるアーカイブ作品の比率が77.4%に達しています。
eFootballやプロ野球スピリッツAのようなライブサービス型ゲームも、一度作った基盤を長く運営して稼ぐモデルです。
このように各社は意図的にヒット依存を下げにいっています。
コナミはライブサービスと過去IP、バンダイナムコは「アプリゲームの安定基盤+大型ヒットの上乗せ」、東宝は三層構造、サイバーエージェントは複数タイトル化、任天堂はハード切り替えリスクの低下です。
いずれも、ヒットを「生存条件」から「上振れ要因」へと位置づけ直そうとしています。
エンタメ業界は以前と比べて安定した業績が期待できるようになっているのも大きな変化と言えそうです。
変化③:日本IPのグローバル化が、市場環境そのものを変えた
3つ目は、グローバル市場の拡大です。
Netflixなどの配信サービスが世界に普及し、日本のアニメやIPが世界同時に届くようになりました。
以前は日本のヒットが時間をかけて海外へ広がる形でしたが、いまは映像とゲーム・商品を、グローバルでほぼ同時に展開できます。
その結果、日本のアニメ市場は2010年の1兆円強から2024年には3.8兆円へ拡大し、2030年には9兆円規模になるとの予測もあります。
各社が海外比率の目標を掲げているのも同じ流れで、バンダイナムコは50%以上、東宝は30%、任天堂に至っては海外がすでに76.9%を占めています。
そんな中でIP企業としてのサイバーエージェントが海外展開に力を入れ始めているのも自然な流れです。
変化④:顧客が「子ども」から「大人」へ
4つ目は、顧客層の変化もあります。
玩具やゲームというと、以前は子ども向けの印象が強いものでした。
ですが、子どもの頃からアニメやゲームに親しんできた世代が大人になり、フィギュア・カード・ゲーム、そして「推し活」にお金を使うようになっています。
少子化で子どもの数は減っているのに、IP関連にお金を使う年齢層そのものが大きく広がったわけです。
結果として少子化にも関わらずゲーム市場だけでなく玩具市場まで拡大が続いています。
そしてこの変化は過去に積み上げてきたIPの価値が、相対的に上がるということも意味しています。
大人になった顧客は、子ども時代から知っているIPに強く反応します。
さらに親子に対しては親世代も知っているIP作品を提供したほうが親子で二重での収益獲得が期待できますから有利です。
となると、長年かけてIPを蓄積してきた既存企業ほど有利で、ゼロから新規IPを立ち上げるより、手持ちの資産を活かすほうが合理的になります。
任天堂のIP再活性化も、コナミのリブート戦略も、この環境を踏まえた動きだと読めます。
ここまでの変化を一言でまとめると、勝負が「次のヒットを出せるか」から「顧客との関係を、どれだけ長く・広く握れるか、そして海外へ広げられるか」へ移った、ということだと考えられます。
その取り組みをどのように行っていくのか各社の動向に注目です。
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