自動車業界編:ブリヂストン【5108】数量を捨てたブリヂストンが、再び成長へ プレミアム戦略と構造改革の成果

日経平均に採用されている銘柄を中心に取り上げているニュースレター、今回取り上げるのは株式会社ブリヂストンです。もちろん、タイヤメーカーとして知られているあのブリヂストンです。現在は自動車業界を中心に取り上げていますがその中でもタイヤメーカの状況がどうなっているのかを見ていきましょう。
妄想する決算 2026.09.03
誰でも

事業内容

それではまず、事業内容から見ていきます。

ブリヂストンは世界最大級のタイヤメーカーで、2024年のタイヤ売上高ベースの世界シェアは

・ミシュラン:14.1%
・ブリヂストン:13.6%
・グッドイヤー:9.6%

となっており、ミシュランに次ぐ世界2位の大手タイヤメーカーです。

では、具体的にどのような製品を展開しているのか。
ブリヂストンでは主に以下の4つに分けて業績を開示しています。

①PS/LT:乗用車・ライトトラック向けタイヤ
②TB:トラック・バス向けタイヤ
③Specialties:鉱山・建設車両、航空機、農業機械、二輪車など向けのタイヤ
④多角化事業:スポーツ用品、化工品など

2025年12月期の構成を見てみると、

売上構成
①PS/LT:2兆5006億円
②TB:1兆184億円
③Specialties:6234億円
④多角化事業:2871億円

調整後営業利益構成(利益率)
①PS/LT:2686億円(10.7%)
②TB:884億円(8.7%)
③Specialties:1255億円(20.1%)
④多角化事業:113億円(3.9%)

と分散した構成ですが、売上・利益ともにPS/LTが最大で、乗用車向けタイヤが事業の中心となっています。

また、Specialtiesでは鉱山で利用する超大型タイヤや航空機向けタイヤなどを展開しています。

この分野では、高い技術力や耐久性、安全性が求められる分野ですから、収益性も高く利益率は20%を超えています。

一般的な乗用車用タイヤと比べて参入障壁が高く、価格競争にも巻き込まれにくい分野です。

売上規模では乗用車向けが圧倒的ですが、利益面ではこうした特殊タイヤも非常に重要な事業だということですね。

米州が最大の市場

続いて地域別に見ていきます。

2025年12月期の地域別構成は、

売上構成
・日本:1兆2659億円
・アジア・太平洋・インド・中国:5178億円
・米州:2兆1305億円
・欧州・中東・アフリカ:8529億円

となっており、最大市場は米州です。

そして、生産面でも海外が中心で、2025年のタイヤ生産量は国内45万トンに対して海外101万トンで、海外生産比率は69%となっています。

現地で生産し、現地で販売する体制をグローバルに構築しており、主力の米州市場の状況には影響を受けやすい企業だと分かります。

タイヤ市場で起きている変化

では、そんなブリヂストンを取り巻く市場環境はどうなっているのでしょうか。

ここで重要なのが、タイヤのコモディティ化と低価格メーカーの成長です。

タイヤは当然、安全性や耐久性が求められる製品ですが、一般的な乗用車向けタイヤでは以前と比べれば生産技術が広く普及しています。

中国をはじめとする新興メーカーも成長し、低価格帯では競争が激しくなっており、2024年の世界シェアを見ると、中国の中策ゴムが2.9%、Sailunが2.4%まで規模を拡大しています。

特に中国ではBYDなど自国の自動車メーカーが台頭するのと同時に、現地タイヤメーカーも成長しています。
低価格帯では中国メーカーの価格競争力が強く、ブリヂストンにとって厳しい市場となっています。

つまり、世界の自動車市場が拡大する=ブリヂストンの販売数量も伸びるという単純な市場ではなくなっているわけです。

実際に、2025年のブリヂストン自身の説明でも、北米では関税引き上げ前の低価格輸入タイヤへの駆け込み需要が発生し、中南米でも低価格輸入品の拡大によって収益が圧迫されたとしています。

数量を追わず「プレミアム」に集中

そこでブリヂストンが進めてきたのが、販売数量を追うのではなく、プレミアムタイヤに集中する戦略です。

特に重視しているのが、18インチ以上の高インチタイヤなどです。

SUVや大型車、EVなどでは大型タイヤの需要が大きくなりやすく、こうした高付加価値製品の販売比率を高めることで収益性の向上を目指しています。

その姿勢はかなり明確です。

例えば2023年には、低採算タイヤや低インチタイヤの販売を意図的に抑えたことで、乗用車向けタイヤの世界販売数量は前年比90%まで減少しました。

それでも数量を取りにいくのではなく、プレミアム領域に集中する方針を取っていました。

いわば、「安いタイヤを大量に売って中国企業と価格競争するのではなく、高性能なタイヤでしっかり利益を取る」という戦略です。

この戦略の動向が業績を左右する状況となっています。

業績

では、この戦略の中で業績はどう変化してきたのでしょうか。2016年から2025年までの売上と調整後営業利益を見てみましょう。

業績の推移を見てみると、2010年代後半は売上・利益ともに悪化傾向となっており、2020年にはコロナ禍で大幅に業績が悪化しています。

ですが、その後は大きく回復し、2022年以降は売上が4兆円を超え、2024~2025年には4.4兆円台まで拡大しました。利益面も5000億円近い水準となり好調が続いています。

ちなみに過去最高は、2015年12月期の5172億円で、2015年には調整後営業利益率が13.6%あったのに対して、2025年は11.1%です。

好調が続くものの、ピークには及ばないという水準です。

では、なぜこのような推移となっていたのでしょうか。

2010年代後半の停滞

2010年代後半は苦戦傾向でしたが、この時期は単一の要因というより、原材料価格の上昇や為替の影響、地域ごとのタイヤ販売の伸び悩み、中国の台頭による競争環境の激化などが重なっていました。

2017年には原材料費の増加が減益要因となり、2019年には米州や中国・アジアなどで販売が減少。

タイヤ以外の多角化事業でも収益性が大きく悪化していました。

そして2020年にはコロナ禍によって世界的に自動車移動や経済活動が停滞し、タイヤ販売数量が大幅に減少し業績は一段と悪化しています。

ですが2021年には世界のタイヤ需要が回復し、業績は改善に向かいます。さらに2022年以降は円安も大きな追い風となりました。

一方で2023年以降は欧米を中心にタイヤ需要が必ずしも強いわけではなく、販売数量の大幅な成長は期待しにくい市場環境となっています。

構造改革とプレミアム化で利益の質が改善へ

それでも2010年代より高く堅調な利益水準が続いているのは、大規模な構造改革と先ほど見たようにプレミアム化の取り組みを進めたためです。

ブリヂストンは2020年代に入って、世界各地で不採算拠点の整理や生産能力の見直しを進めています。

2024~2025年にも北米のトラック・バス用タイヤ工場の閉鎖、欧州での生産能力削減、中南米事業の再構築などを進めました。

2025年だけでもコスト削減効果は前年比約720億円、2024~2025年累計では約1470億円に達したとしています。

さらに、先ほど取り上げたようにプレミアム化戦略に明確に舵を切っています。

その結果、原材料費や人件費、物流費などのインフレが進む一方で、値上げと高インチタイヤなど高付加価値商品の拡販によってそれを打ち返し、利益面は堅調だったわけです。

2025年は売上横ばいでも増益

実際に2025年12月期をみても

売上高:4兆4295億円(ほぼ横ばい)
調整後営業利益:4937億円(2%増)
調整後営業利益率:11.1%
親会社株主帰属利益:3273億円(15%増)

となっており、北米景気の減速や低価格輸入品との競争、米国関税など厳しい環境だったとしているものの、プレミアムタイヤの販売、価格・販売構成の改善、構造改革、コスト削減によって増益を確保したとしています。

特に大きく改善したのがトラック・バス向けです。

調整後営業利益は、

2024年:579億円
2025年:884億円

と53%増加し、利益率も5.7%→8.7%まで改善しました。

構造改革の効果が徐々に表れ始めたとしています。

売上が伸びなくとも利益を収益性を高められる体制を構築しているということですね。

とはいえ、乗用車向けは、プレミアムタイヤの販売自体は伸びたものの、北米でのサイバーインシデントや中南米での低価格輸入品との競争もあり、利益は5%減少したとしています。

プレミアム戦略を進めれば必ず成功するわけではなく、競争環境の厳しさも残っており、事業環境の変化には注意して見ていく必要はありそうです。

直近の業績

そんな中で直近の2026年12月期2Qの業績がどのような状況なのか見ていきましょう。

売上高:2兆3217億円(10%増)
調整後営業利益:2809億円(20%増)
調整後営業利益率:12.1%
親会社株主帰属利益:2062億円(79%増)

と増収増益で、これは売上・調整後営業利益ともに上期として過去最高だとしています。

それがなぜか、前年同期比で調整後営業利益が463億円増加しましたが、その主な要因を見てみると、

・原材料:+230億円
・価格:+80億円
・販売MIX:+110億円
・販売数量:+60億円
・為替:+200億円

となっています。

原材料環境の改善や円安に加え、販売MIXや価格の改善も寄与しており、これまで進めてきた高収益化の取り組みが引き続き利益を押し上げています。

ですが、直近では販売数量そのものがプラス要因に転じている点は新しい変化です。

販売数量面でも改善が見られ始めており、ブリヂストン自身も「成長フェーズへの移行」と表現しています。

プレミアム化しながらシェアも伸ばし始めた

さらに、単純に数量が増えただけではありません。

北米では乗用車用・トラック用とも交換用タイヤ需要そのものは前年割れでした。

2026年第2四半期では、

乗用車交換用タイヤ需要:前年比92
ブリヂストン販売:97

トラック・バス交換用タイヤ需要:88
ブリヂストン販売:99

となっています。

市場全体が縮小する中でも、市場以上の販売実績となりシェアを伸ばしています。

以前は「数量を追わずプレミアム化する代わりにシェアを落とす」という場面もありましたが、現在は、プレミアム化を継続しながらシェアまで伸ばし始めています。

これは期待できる点です、この変化が今後も続くかは非常に重要ですから注目です。

特殊タイヤは依然として圧倒的な高収益

また、製品別でも2026年上期は全分野で増収増益となりました。

①PS/LT
売上:1兆3061億円(11%増)
調整後営業利益:1470億円(18%増)
利益率:11.3%

②TB
売上:5229億円(8%増)
調整後営業利益:507億円(24%増)
利益率:9.7%

③Specialties
売上:3436億円(11%増)
調整後営業利益:789億円(20%増)
利益率:22.9%

となっています。

Specialtiesでは鉱山用超大型タイヤの販売が伸びており、利益率は22.9%と依然として圧倒的に高くいです。

現在は資源価格の上昇によって鉱山の採掘活動も活発となっています、そういった市場の追い風もありますから、好調が続く事が期待出来そうです。

今後のリスク

このように堅調な業績が期待されるブリヂストンですが、もちろん懸念点もあります。

まず、中国をはじめとする低価格メーカーとの競争です。

特に景気が悪化すると消費者は低価格品を選びやすくなりますから、プレミアム戦略を取るブリヂストンには逆風です。

さらに現在は地政学リスクも大きくなっています。

2026年上期は好調だったものの、会社は中東情勢に伴う原材料などのコスト増によって、下期だけで600億円超、通期で約700億円の悪影響を見込んでいます。

そのため、上期が計画を上回ったにもかかわらず、通期予想は据え置いています。

タイヤは天然ゴム、合成ゴム、石油由来原料などを大量に使う製品ですから、原材料価格や物流費、為替、関税、地政学の影響は避けられません。

高収益体質への改革が進んだからこそ、こうした外部環境の悪化をどこまで吸収できるのかも注目です。

まとめ

ということでブリヂストンは、世界シェア13.6%を持つ世界2位のタイヤメーカーで、米州を最大市場としてグローバルに事業を展開しています。

主力は乗用車向けタイヤですが、鉱山用などの特殊タイヤは利益率20%を超える高収益事業となっており、大きな強みです。

タイヤ市場では中国メーカーなど低価格勢の成長が続いており、単純な販売数量競争では厳しい環境となっています。

そこでブリヂストンは低採算品の販売を減らし、高インチタイヤなどのプレミアム製品に集中してきました。

さらに近年は、世界各地で工場や事業を整理し、大規模な構造改革とコスト削減も進めています。

その結果、2025年は売上が横ばいでも増益。

そして2026年上期には、値上げや円安だけではなく販売数量も増益要因となり、市場が縮小する北米でもシェアを拡大。

プレミアム化と構造改革を終え、再び成長を目指す段階に入り始めました。

数年前までのブリヂストンを見るうえで重要だったのは、

「販売数量が減る中で、どれだけ価格を上げられるか」

でした。

ですが現在の注目点は少し変わっています。

「改善した収益性を維持したまま、プレミアム領域で販売数量とシェアを再び伸ばせるか」

となっていますから、その点に注目です。

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