ファーストリテイリング【9983】大きな成長が続くユニクロ、いまだ0.5%の欧米のシェアをどれだけ拡大させられるか
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事業内容
それではまず、事業内容から見ていきます。

ファーストリテイリングの主な事業セグメントは以下の4つです。
①国内ユニクロ事業
②海外ユニクロ事業
③ジーユー事業
④グローバルブランド事業:セオリー、プラステ、コントワー・デ・コトニエ、プリンセス タム・タムなどを展開
複数のアパレルブランドを展開していることが分かります。
商品特性
主力ブランドのユニクロでは「LifeWear」、つまり日常生活をより快適にする究極の普段着をコンセプトに、流行に大きく左右されにくい定番商品を中心に展開しています。
なので、毎シーズン大量の新商品を投入するというより、ヒートテックやエアリズム、フリースといった定番商品を継続的に改善しています。
そのため、開発した商品を世界各地で大規模に販売できれば、生産規模の拡大によるコスト低下も期待できます。
一方、ジーユーでは「ファッションと低価格」を軸に、よりトレンド性の高い商品を短いサイクルで提供しています。
ユニクロとジーユーは、同じ衣料品を扱っていても商品開発の考え方が異なるということです。
ビジネスモデル
そして、ファーストリテイリングのビジネスモデルの大きな特徴が、SPAと呼ばれる製造小売業です。
分業制ではなく、素材の調達や商品の企画、生産管理、物流、販売までを一貫して管理しているということです。
自社で一連の流れを管理することで、各工程を別の企業に委託する場合と比べて、中間に入る企業の取り分を抑えやすくなることはもちろん、店舗やECから得られた顧客の声や販売データを、商品開発や生産量、在庫管理に直接反映できるというメリットもあります。
ファーストリテイリングは2017年から「有明プロジェクト」を進め、顧客の声、販売状況、在庫や商品の動きを細かく把握し、商品開発から生産、物流、店舗運営までを素早く改善する「情報製造小売業」への転換を進めています。
つまり、ファーストリテイリングは単に安い衣料品を大量に販売する企業ではなく、世界各地の顧客データを集め、それを定番商品の改善や生産・在庫管理に反映し、同じ商品を大きな規模で販売することで、高品質と低価格を両立する企業だということです。
事業構成比
続いて、2025年8月期の事業別の構成を見ていきましょう。
売上構成
①国内ユニクロ事業:30.2%
②海外ユニクロ事業:56.2%
③ジーユー事業:9.7%
④グローバルブランド事業:3.9%
事業利益
①国内ユニクロ事業:1,813億円
②海外ユニクロ事業:3,053億円
③ジーユー事業:283億円
④グローバルブランド事業:26億円
売上・利益共に、海外ユニクロが半分以上を占める主力です。すでに海外を主力とするグローバル企業だということですね。
そして、ブランドとしては国内ユニクロと海外ユニクロはそれぞれ17.7%、16.0%の事業利益率となっており、ユニクロは収益性が高いです。
ジーユーやグローバルブランド事業の利益規模はまだ小さく、事業利益率も10%を下回ります。
現状のファーストリテイリングの成長は、基本的にユニクロ事業によって支えられています。
各地域の市場シェア

では、ユニクロは各地域でどの程度の市場シェアを持っているのでしょうか。
日本:約12%
韓国:約5%
東南アジア・インド・豪州:約2%
グレーターチャイナ:約1.5%
欧州:約0.5%
北米:約0.5%
日本では10%を超えるシェアを持ち、韓国でも5%と高めな一方で、その他の海外市場でのシェアはまだ低い状況です。特に欧米はまだ0.5%です。
とはいえ、海外ユニクロの地域別売上構成には大きな変化が起きています。
2020年8月期には、海外ユニクロの売上の54.0%をグレーターチャイナが占めていました。
それが2025年8月期には、
グレーターチャイナ:34.0%
韓国・東南アジア・インド・豪州:32.4%
欧州・北米:33.6%
となり、ほぼ3分割された構成にななっています。
以前は中国を中心に海外展開を進めていましたが、欧米や東南アジアなどが急速に成長したことで、収益源の地域分散が進んでいます。
成長が続く欧米は、まだシェアは0.5%と低いものの、アパレル市場自体の規模が大きいため、ユニクロが数%のシェアを獲得するだけでも、現在とは大きく異なる売上規模になる可能性があります。
グレーターチャイナは依然として重要ですが、欧米のシェア拡大が非常に重要な状況だと考えられますので、その点には注目です。
業績推移
続いて、2016年8月期から2025年8月期までの10年間の業績推移を見ていきましょう。

コロナ禍での一時的な停滞はありましたが、右肩上がりで成長が続いていおり、10年間で売上は約1.9倍で、事業利益は約3.4倍に増加しています。
そして、営業利益も1,272億円から5,642億円へ約4.4倍となっており、営業利益率は7.1%から16.6%まで上昇しています。
売上の伸び以上に利益の伸びが大きいですから、単に店舗を増やして売上規模が大きくなっただけではなく、事業の収益性そのものが大幅に高まっていることが分かります。
業績が成長した理由
では、なぜこれほど成長したのでしょうか。
国内ユニクロが人口減少の中でもシェアを拡大し堅調に成長を続けているということもありますが、それ以上に大きいのが海外での成長です。
アパレル企業は通常、国や地域によって好まれるデザインや流行が異なるため、海外展開の難易度が高いです。
一方、ユニクロが主力とするのは、機能性インナーやフリース、ダウン、Tシャツ、パンツといった日常的に着用する商品です。
流行性の高い服と比べれば、国による需要の違いが小さく、同じ商品を世界各地で販売しやすい特性があります。

さらに、地域に応じた色、サイズ、商品の組み合わせやマーケティングを強化したことで、グローバルでLifeWearへの理解が広がっています。
「Life Wear」というコンセプトがグローバル展開に向いていたということですね。
そんな中で海外では、2010年代後半には、中国を中心とするグレーターチャイナで店舗数と売上を伸ばしました。
その後は韓国、東南アジア、インド、豪州、欧州、北米でも成長が進み、2025年8月期には海外ユニクロの売上が1兆9,102億円まで拡大しました。
特に近年の成長に影響しているのが欧州と北米で、2022年8月期から4期連続で年率30~50%の売上成長を続け、その間に事業利益は約4倍になっています。
高単価で売れやすい欧米市場を取り込んだことが利益成長につながっているということです。この点からも欧米市場の重要性が分かります。
加えて、商品・在庫・店舗運営の精度向上も効いています。
アパレル企業は、商品が売れ残ると値下げ販売が増え、粗利益率が悪化します。
逆に、売れる商品を必要な量だけ作り、適切な店舗に配置できれば、値下げを減らしながら売上を伸ばせます。
ファーストリテイリングは、商品ごとの販売、在庫、顧客の反応を細かく確認するSKU経営や個店経営を進めています。
規模が大きくなったことで、販管費を売上の伸びより抑えられるようになったことも、利益率の改善につながっています。
つまり、国内のシェア拡大、欧米を含む海外事業の拡大、在庫・コスト管理の改善が同時に進み、収益性を高めつつの成長が続いているということです。
加えて、本業以外でも、債券など安全性の高い金融商品を増やしたことで受取利息も拡大しています。
受取利息は2018年8月期の75億円から2025年8月期には653億円まで増えており、最終利益の拡大を後押ししています。
利息で数百規模を稼げるようになっており、この点も企業としての強みとして効いています。
直近の状況

それでは、続いて直近の2026年8月期第3四半期までの業績を見ていきましょう。
売上収益:3兆651億円(+17.1%)
事業利益:5,927億円(+33.6%)
営業利益:6,143億円(+36.2%)
純利益:4,260億円(+25.6%)
大幅な増収増益となり、売上・利益ともに過去最高を達成しています。
さらに、売上総利益率は53.8%から54.9%へ1.1ポイント改善し、売上高販管費率は36.9%から35.6%へ1.3ポイント改善しています。
結果として事業利益率は17.0%から19.3%、営業利益率は17.2%から20.0%まで上昇しました。
売上が増えただけでなく、粗利益率と販管費率がともに改善したことで、利益が売上を大きく上回るペースで成長しているということです。

主力事業のセグメント別の業績は以下の通りです。
国内ユニクロ事業
売上収益:8,676億円(+8.3%)
事業利益:1,729億円(+15.1%)
海外ユニクロ事業
売上収益:1兆8,340億円(+25.9%)
事業利益:3,453億円(+45.4%)
ジーユー事業
売上収益:2,656億円(+3.7%)
事業利益:321億円(+28.0%)
国内外のユニクロが共に好調です。
国内では、業績予想を上回ったとしており、気温の変化に対応した機能性商品の販売が好調だとしていますし、ゴールデンウィークや感謝祭商戦も盛況だったとしています。
インフレや消費抑制といった懸念がありますが、それでも機能性商品はニーズを捉え好調なようで、強さが分かります。
生産性の改善の取り組みも進んだとしており、販売面だけではなく収益性改善の取り組みも進んでいます。
ジーユーも、原価低減に加え、品番数の削減や在庫適正化によって店舗運営を効率化したことで、事業利益率は9.8%から12.1%まで改善しています。 ユニクロと比べると利益規模はまだ小さいものの、事業構造改革の効果が出始めています。
さらに、海外でも業績予想を上回ったとしており、グレーターチャイナ、韓国、東南アジア・インド・豪州、北米、欧州のすべての地域で増収増益となり、事業利益率も15.3%から18.9%へ改善しています。
為替が円安に推移したことで、海外業績を円に換算した際の押し上げ効果もありますが、それだかではありません。
例えば3Qでは素材やシルエットを改善した通年商品や、さまざまな場面で着用できる夏物商品が好調だったことに加え、欧米を中心にブランドを代表する店舗を出店したことも成長につながったとしてます。
海外でも、ニーズを捉えて事業の拡大が続いているということですね。
国内外とも事業が好調で、生産性の改善の取り組みも進んでおり今後も堅調な業績が期待出来そうです。
成長戦略
最後に、今後の成長戦略を見ていきましょう。
ファーストリテイリングは、長期的に売上収益10兆円を目標としています。
2025年8月期の売上は3.4兆円ですから、現在の約3倍まで成長する計画です。
成長の中心となるのは、引き続き海外ユニクロ事業です。
特に欧州と北米では、市場シェアがまだ0.5%程度しかありません。
会社側は、近い将来に欧州と北米でそれぞれ売上1兆円を目指しています。
欧州・北米を合わせた現在の売上は約6,400億円ですから、それぞれ1兆円を達成できれば、この2地域だけで現在の3倍を超える規模になります。
そのために、
・主要都市への旗艦店の出店
・現地顧客の声を反映した商品開発
・店舗とECの一体運営
・現地のサプライチェーン構築
・経営人材の育成
を進めていくとしています。
先ほどから取り上げてきた通りで、欧米の成長は利益面の拡大にも効きますから、今後も欧米の成長が続いているかには注目です。
他の地域では、グレーターチャイナは、単純な店舗数拡大から、店舗ごとに地域の顧客へ向き合う個店経営への転換を進めています。単純な成長市場から収益性の改善を狙う市場に変化してきたということですね。
東南アジア・インド・豪州では、人口や所得の増加に加え、店舗数や市場シェアがまだ小さいことから成長余地があるとしており、拡大を目指しています。
一方で、常夏の地域では日本や欧米とは売れる商品が異なるため、単に日本の商品をそのまま販売するのではなく、気候や生活習慣に合った商品構成を作る必要がありますから、拡大の難しさは一定あると考えられます。
成長余地は大きな市場ではありますからあ、その取り組みにも注目です。
まとめ
ということで、ファーストリテイリングは、この10年間で売上を約2倍、事業利益を約3.4倍に伸ばしました。
以前は日本とグレーターチャイナへの依存度が高い企業でしたが、現在では欧州、北米、東南アジアなどが成長し、複数の地域が利益を稼ぐ構造へと変化しています。
直近では売上の拡大だけでなく、粗利益率や販管費率も改善しており、収益性も一段と高まっています。
今後のポイントは、シェアの低い欧米で成長を続けられるか、中国事業の構造改革を進められるか、そしてユニクロで確立した商品・在庫・店舗運営の仕組みをジーユーなどにも展開できるかです。
売上10兆円という目標は非常に大きいですが、欧米を中心に市場シェアはまだ低く、成長余地自体は残されています。
海外での急拡大によって店舗や物流、人材への投資負担も増えますので、売上規模だけでなく、現在の高い利益率を維持しながら成長できるかに注目です。
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