医療業界編:シーユーシー【9158】垂直統合型医療企業の強みと収益性低下の理由

日経平均に採用されている銘柄を中心に取り上げているニュースレター、今回取り上げるのはグロースコアの採用銘柄である株式会社シーユーシーです。シーユーシーは、医療機関の運営プラットフォーム企業です。前回は医療機器メーカーであるテルモを取り上げましたので、今回は医療機関の状況を見ていきましょう。
妄想する決算 2026.07.30
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事業内容

それでは早速事業内容から見ていきましょう。
シーユーシーの事業セグメントは以下の4つです。

①医療機関:国内で病院や訪問診療クリニック、透析クリニックなどに対する経営支援、海外では米国中心にクリニック運営

②ホスピス:終末期の患者向けホスピス型住宅を運営、24時間365日体制で看護・介護を提供
対象は、がん末期、パーキンソン病、ALSなど医療依存度の高い患者で2025年12月末時点で59施設を運営

③居宅訪問看護:利用者の自宅に看護師やセラピストが訪問し、看護やリハビリを提供
2025年12月末時点では91拠点、利用者数15271人

④メディカルケアレジデンス:住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の運営、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスなどを提供。

医療機関の経営支援から、海外では実際にクリニックの運営、さらにホスピスや住宅訪問介護、高齢者住宅の運営などを提供しており、ドミナント戦略とグループのシナジーによって成長してきた企業となっています。

多くの医療関連企業は、病院向けSaaS、訪問看護、ホスピス、など単一事業の企業が多いです。

ですが、シーユーシーは入院治療、在宅治療、終末期ケアまでを垂直統合で全体を提供している事が特徴の企業となっています。
そして、その統合によって患者紹介や採用、拠点展開の効率化が可能となっている事が強みだとしています。

医療・介護業界は、需要の拡大が進むものの、人手不足が深刻化しており単独拠点では採用も定着も難しさがあります

そこで、病院支援、訪問診療、訪問看護、ホスピス、介護住宅をまとめて持つ事で、地域内で複数の職場選択肢を提示できるというのが採用面の強みとして働くとしています。

さらに、支援先医療機関との連携があるため、ホスピスや訪問看護の立ち上げ時に患者紹介や医師確保の面で有利になりやすいともしています。

医療業界は人手不足が最大の課題で、人材確保が拡大のために非常に重要ですから、その点ではは一定の強みを持っていると考えらえます。

続いて2026年3月期のセグメント別の構成を見ていくと以下の通りです。
売上構成
①医療機関:168億円
②ホスピス:167億円
③居宅訪問看護:129億円
④メディカルケアレジデンス:77億円

セグメント利益
①医療機関:46億円
②ホスピス:10億円
③居宅訪問看護:14億円
④メディカルケアレジデンス:▲3億円

比較的分散した構成ですが、利益面に関しては医療機関事業が主力となっている事が分かります。

主力の医療機関事業をもう少し詳しく見ていきましょう。

2025年3月期のEBITDAは以下のようになっており国内事業が大半を占めています。
国内:43億円
海外:3億円

国内事業の主力である医療機関の経営支援の特徴としては、単なる助言を行うだけでなく、事務長や管理部長機能に近い人材が常駐し、経営戦略、人事採用、マーケティング、IT・経理・総務支援、調達支援まで踏み込んで支援することとなっています。

そして報酬体系は、継続課金の月額報酬と、M&Aや新規開設支援などのワンタイム報酬となっており、主要支援先は2025年3月期時点では134となっています。

主力の医療機関事業の国内には、ストック型の報酬があり主軸だと考えられますので、一定の安定した業績が期待できると考えられます。

また、海外では米国を中心に、足病・下肢静脈疾患のクリニックを運営しています。
2025年12月末時点では36拠点となっており、買収によって規模を拡大しています。

業績

事業内容が分かった所で続いて業績の推移を見ていきましょう。

売上の推移を見ていくと、コロナ禍ではコロナ関連の売上があった反動で増減ありつつとなっていますが、主力事業に関しては右肩上がりでの拡大が続いています。

2021/3期から2026/3期予想までの売上の年間平均成長率は+28.5%と高成長です。
セグメント別では、医療機関+24.2%、ホスピス+41.7%、居宅訪問看護+15.0%とそれぞれ大きな成長を見せています。

営業利益の推移に関しては2022~2024年3月期は横ばいで、2025年3月期は増益という状況です。

2022~2023年3月期に関しては、コロナ関連の需要がありましたからそれを除くと利益面も拡大傾向にあります。

ではなぜ拡大傾向となっているのか。

その要因は市場の拡大や市場の変化を背景にした事業規模の拡大です。

市場環境としては、高齢化によって国内の医療費は増加が続いており、今後も2022年の47兆円から2040年に78兆円へ拡大する見通しで、医療需要も増加が見込まれています。

一方で、労働人口は減少しており、今後も2020年の6,900万人から2040年に6,540万人へ減少する見込みです。
さらに診療報酬改定が2年に1回行われるため、医療機関の経営は複雑化しています。
加えて後継者不在の病院割合は68.4%、経営者が60歳以上の病院割合も68.7%とされており、事業承継問題も大きいです。
そのため、こうした状況の中で医療機関向け経営支援ニーズは拡大しており、今後も堅調に拡大するとしています。

市場規模の拡大によって主力の医療機関の経営支援が成長してきたということです。

さらに、ホスピス市場は特に追い風が強く、がん末期や難病患者に対応できるホスピス型住宅の定員は現時点で不足しているとしています。
そして2040年には適切な終末期医療を受けられない高齢者が約49万人に達すると予想されています。

つまりホスピス市場は、すでに供給不足の市場となっているという事です。

加えて、居宅訪問看護も高齢者増加と医療費増加を背景に年平均13.4%で増加しているとしています。
訪問看護ステーションの57%は看護師5人未満の小規模事業所となっており、24時間365日体制を安定運営できる大規模事業所へのニーズも高いとしています。

このような環境の中で、M&Aによってホスピス運営会社、訪問看護、海外クリニックなどを獲得し、事業領域や事業規模を拡大させています。

市場が拡大する中で、経営支援事業の成長、そしてM&Aによる領域拡大によって、業績も拡大してきたという事ですね。

今後も、高齢化や人手不足が予想される日本においては主力事業の提供する市場は軒並み拡大が予想されています。
この市場の成長に伴って拡大が進むかが重要なポイントとなっています。

懸念点

このように市場は拡大が期待出来る状況ですが、一方でそれに収益性が付いてくるかどうかには懸念点があります。

というのも、医療は社会保障制度によって補われている市場であり、医療費の増加というのは日本の大きな課題の1つだからです。
すでに診療報酬や介護報酬の引き下げといった、制度面の改定も進んでいます。

労働集約的な事業ですから人件費は大きなコストです。
となると人手不足によって人件費が上昇する一方で値上げが難しい、という状況だと事業の収益性は低下する可能性があります。

さらに、近年は建築費の上昇も進んでいます。価格転嫁が難しい一方で、施設の建設コストが上昇すればそれもまた収益性を押し下げます。

加えて、ホスピスでは競合他社の不正請求報道もあり、ホスピス業界全体への社会的信用が毀損しているともしています。

需要は拡大が見込めますが、一方でこういった状況の中で収益性を維持できるかには注意してみていく必要があります。

シーユーシーは垂直統合による運営力や採用力に強みがあるとしていますので、その強みがしっかり効いているかも企業を見る際の重要なポイントだと言えそうです。

直近の業績

続いて直近の2026年3月期の状況は詳しく見ていきましょう。

売上高:544億円(+15.5%)
EBITDA:85億円(+5.8%)
営業利益:58億円(+8.2%)
純利益:29億円(▲8.9%)

増収増益が続いているものの。純利益は減益となっている事が分かります。純利益が減益となった要因は前期の一時要因の反動だとしていますから、増収増益傾向が続いているといえます。

とはいえ、営業利益に関しては事業用不動産の売却益があったとしており、それが無ければ減益という状況です。
EBITDAマージンも17.1%→15.7%まで減少していますし、事業の収益性が低下しているということです。

もう少し詳しくセグメント別のEBITDAの前期比をみてみると以下の通りです。

医療機関:▲6.1億円
ホスピス:+2.3億円
居宅訪問看護:+1.8億円
メディカルケアレジデンス:+7.1億円

メディカルケアレジデンス事業は買収の効果が通期で出た事で大きなプラスとなったものの、主力の医療機関が苦戦しています。

医療機関事業では、国内では上期に月額報酬の減額によって売上・EBITDAともに減少に転じたとしています。
ですが、下期には支援先医療機関の業績改善に伴い、月額報酬を段階的に適正化し回復したとしており、売上やEBITDAは改善しています。

今後は一定の改善が期待出来そうです。

とはいえ、支援先の医療機関の業績によって、シーユーシーの業績も悪化するリスクが存在するという事であり、診療報酬の改定などで経営に苦戦する医療機関が増える中で、その点は引き続き注意が必要そうです。

ホスピスは施設数も定員も増え、売上は伸びていますが、EBITDAマージンが14.6%から13.4%へと収益性が低下しています。
これは、新規施設の初期赤字と既存施設の一部単価低下による影響が出ているとしています。

とはいえ3Q以降では、新規施設の稼働率向上によってEBITDAマージンは16%台まで改善しています。

施設を開業した当初は稼働率と初期コストによって収益性が低下しますが、ホスピス自体が不足していますから一定期間で収益性が改善する状況だと考えられます。

今後も複数新規の開業を予定していますので、一時的な収益性の低下が起きる可能性はありその点は注意が必要ですが、一定期間で収益性が改善するのであれば、まだ一定の拡大が期待されます。

ということで、直近では収益性が低下していますが、どの事業も改善余地はありますので今後は一定の収益性改善が期待出来そうです。

とはいえ、日本の医療費の問題や人件費上昇、建築費高騰といった市場環境の変化によって収益性低下のリスクはあります。
今後は収益性を伴った拡大が進むのかに注目です。

成長戦略

最後に成長戦略も見ていきましょう。

医療機関事業に関しては、国内では引き続き支援先拠点数の拡大を進めるとしており、米国では足病クリニックの買収と統合を進め、領域拡大と既存患者の外部流出を防ぎLTVを増やす形でも拡大していこうとしています。
規模とLTV両面でのさらなる拡大を進めていくという事ですね。

また、ホスピス事業では、従来の50床単独型中心から、120床規模でフロアごとに複数機能を持たせる多機能併設モデルへ投資方針を転換するとしています。
それによって、一棟当たり売上規模を約4億円から約8億円へ倍増させる構想です。

想定利益率は25%から20%へやや下がるものの、投資効率と制度変更耐性を高めようとしている考えられます。
建設費高騰や診療報酬改定による影響を考えた投資方針の変更を進めていくという事ですね。
ホスピスも需要が拡大するからとはいえ、拠点数だけを拡大する事は難しい状況となっている事も考えられます。

訪問看護は、新規出店一辺倒ではなく、既存拠点の利用者数増加と訪問効率向上、中重度患者への対応力強化で利益率改善を進めていこうとしています。

今後も規模の拡大を進めていこうとしていますが、事業環境の変化の中で規模の拡大だけではなく、事業の基盤強化へも力を入れていこうとしているという事です。
今後は収益性を伴った成長を見せられるかに注目です。

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