小売り業界編:ZOZO【3092】国内最大級のファッションECの成長には物流効率化が重要な話
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事業内容
それではまず、事業内容から見ていきましょう。
まず事業セグメントを見ていくと「EC事業」の単一となっており、イメージ通りファッションECを展開していることが分かります。
では、具体的にどのような事業があるのか、もう少し詳しく主な事業をみてみると以下の通りです。

①ZOZOTOWN事業:ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」の運営
・受託販売:ブランドから商品を預かり、ZOZOTOWNで販売して手数料を得る事業
・買取・製造販売:ブランドから商品を買い取る、または自社で商品を企画・製造して販売する事業
・USED販売:個人などから中古のファッション商材を買い取り、ZOZOUSEDで販売する事業
②LINEヤフーコマース:Yahoo!ショッピング内のZOZOTOWNや、Yahoo!オークション内のZOZOUSEDなど
③LYST:欧米を中心に展開するファッションショッピングプラットフォーム。提携するブランドや小売企業の商品を掲載し、購入が発生すると成果報酬型の手数料を受け取る事業
④BtoB事業:ブランドメーカーの自社ECサイトの開発、運用、物流業務などを受託する事業
⑤広告事業:ZOZOTOWNやファッションコーディネートアプリ「WEAR by ZOZO」の広告枠を提供する事業
⑥その他:ZOZOオプションや、実店舗の商品をZOZOTOWN上で取り置きできるZOZOMOなど
ZOZOTOWNの運営を中心に、欧米事業やtoB向けのECサイトの支援なども展開していることが分かります。
構成比
続いて、2026年3月期の商品取扱高の構成を見ていきます。

①ZOZOTOWN事業:5166億円(77.6%)
②LINEヤフーコマース:789億円(11.8%)
③LYST:422億円(6.3%)
④BtoB事業:84億円(1.3%)
⑤その他:199億円(3.0%)
LINEヤフーの店舗まで含めると、売上の約9割をZOZOTOWNが占めておりZOZOTOWNを主力とする企業だと分かります。
ZOZOTOWNとは

主力サービスのZOZOTOWNは国内最大級のサービスとなっており、2026年3月末時点で1710ショップ、1万1247ブランドが出店しており、商品数は常時138万点以上で、年間購入者数は1317万人に達しているとしています。

ユーザーの属性としては、男女比は28:72、平均年齢は34.5歳となっており、比較的若い女性層の利用が大きいサービスだということです。

また、ZOZOはサイトのシステムやデザインだけでなく、商品の保管や出荷を行う物流機能まで自社で持っているというのが特徴です。
さらに、「WEAR by ZOZO」はコーディネートを投稿・閲覧できるファッションアプリで、アプリのダウンロード数は2000万件を超えています。
ユーザーは投稿されたコーディネートから気になった商品を探せるため、ZOZOTOWNへの集客にも活用できるサービスとなっています。
単にECを展開するだけでなく、大規模なコーディネートアプリという集客導線から、物流機能まで幅広く事業を展開している企業だということです。

続いて、ZOZOTOWN事業の内訳を見てみると、以下の通りです。
①受託販売:4927億円(95.4%)
②USED販売:211億円(4.1%)
③買取・製造販売:28億円(0.5%)
大半を受託販売が占めています。
受託販売では、ブランド側が商品の在庫を保有し、ZOZOは商品が売れた際に手数料を受け取ります。
そのため、商品の売れ残りによる在庫リスクが小さく、ZOZOTOWNの商品取扱高が増えると収益も拡大しやすい事業構造です。
ZOZOは物流拠点やシステムへの投資は必要ですが、商品の在庫リスクを大きく負わずに流通規模を拡大できることが強みとなっています。
業績の推移
事業内容が分かったところで、続いて2017年3月期から2026年3月期までの10年間の業績を見ていきましょう。

基本的には右肩上がりに拡大が続いていることが分かります。
売上高は、2017年3月期の764億円から2026年3月期には2284億円まで約3倍に拡大しています。
営業利益は2017年3月期の263億円から、2026年3月期には694億円まで約2.6倍となています。
基本的には拡大が続いていますが、一方、2019年3月期には売上高は増加したものの、営業利益は327億円から257億円へ減少しています。
その後、2020年3月期は小幅な増益にとどまりましたが、2021年3月期には営業利益が278億円から441億円へ急拡大しその後はかくだいけいこうとなっています。
2020年前後は一定の停滞があり、近年は再び好調だということです。
2020年前後の停滞要因
では、なぜこのような業績の推移になったのでしょうか。
まず、2019年3月期に利益が大きく減少した要因から見ていきましょう。
この時期のZOZOは、採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」を活用したプライベートブランド事業の拡大に取り組んでいました。
ZOZOSUITを無料配布したことで広告宣伝費が増加したほか、プライベートブランドの開発人員やエンジニアの積極採用、システムや物流拠点への投資も進めていました。
さらに、プライベートブランド商品の在庫評価損も発生しています。
その結果、商品取扱高は約19%増加した一方、販管費は約37%増加し、営業利益は約22%の減益となりました。
新規事業への積極投資が、想定通りの結果を見せられず利益を圧迫していたということです。
続く2020年3月期は、プライベートブランド関連のコスト縮小や値引き費用の減少によって利益率は改善しました。
一方で、消費増税後の反動や記録的な暖冬によってファッション市場が低迷し、商品取扱高の伸び率は6.6%にとどまっています。
アパレルは季節性の強い事業です。
特に単価の高い冬物商品が売れる10~12月期は重要ですが、暖冬になるとコートやニットなどの販売が伸びにくくなります。
2020年前後の停滞には新規事業の苦戦に加えて、市場環境の悪化も重なっていたということですね。
近年は好調へ
その後、業績が大きく伸びたのが2021年3月期です。
コロナ禍では外出機会が減少し、ファッション需要自体には悪影響がありました。
一方で、実店舗からECへの移行が急速に進み、これまで衣類をネットで購入していなかった層もECを利用するようになりました。
ZOZOでは、新型コロナによる需要減少をデジタルシフトの好影響が上回り、購入者数や商品取扱高が大きく増加しています。
また、2019年にはYahoo!ショッピングへZOZOTOWNを出店しており、LINEヤフー経済圏からも新たなユーザーを獲得できるようになっています。
商品取扱高の増加による粗利の拡大に加えて、値引きやプロモーション費用の減少、倉庫内作業の効率化も進み、利益が大きく伸びました。
2022年3月期以降も、TVCMやWEB広告による集客、ポイントを利用した販促、LINEヤフーコマースの拡大によって、商品取扱高は成長を続けています。
さらに、利用者や流通規模が拡大する中でも、物流拠点の効率化や決済コストの削減を進めたことで、利益も安定して伸びてきました。
つまり、ZOZOのこの10年間は、
2010年代後半まではZOZOTOWNの利用拡大による成長
2019年3月期はZOZOSUITやプライベートブランドへの投資で減益
2020年3月期は暖冬や消費増税後の反動で伸び悩み
コロナ禍以降はファッションECへのデジタルシフトで再成長
近年はLINEヤフー経済圏や物流効率化も成長を支える
という推移だったことが分かります。
直近の状況
それでは続いて、直近の2026年3月期の業績を詳しく見ていきましょう。

商品取扱高:6660億円(+8.4%)
売上高:2284億円(+7.2%)
営業利益:694億円(+7.1%)
経常利益:693億円(+6.7%)
純利益:479億円(+5.7%)
増収増益となり、商品取扱高や利益は過去最高を更新しています。

一方で、商品取扱高の伸びには2025年に買収したLYSTの影響もあります。
ZOZOTOWN事業、LINEヤフーコマース、BtoB事業を合計した商品取扱高は6039億円で、前期比5.1%増でした。
全体では8.4%成長していますが、国内の既存事業は5%程度の安定成長となっており、M&Aによって成長領域を広げ始めていることが分かります。
購入者数は増加、1人当たりの利用は減少

拡大の要因は購入者数の増加です。
ZOZOTOWNの年間購入者数は、2025年3月期の1222万人から1317万人へ増加しました。
WEB広告や友達紹介キャンペーン、休眠会員の掘り起こしが成果を上げ、国内事業も堅調に成長しています。

一方、アクティブ会員1人当たりの年間購入金額は4万2953円から4万1323円へ、年間購入点数も10.9点から10.6点へ減少しました。
新規ユーザーは既存ユーザーより購入頻度が低い傾向があるため、購入者数の増加に伴って平均値が下がること自体は不自然ではありません。
とはいえ、現在の成長は1人当たりの利用拡大ではなく、利用者数の増加によるものです。
今後は、獲得した新規ユーザーが定着し、購入金額や購入点数が下げ止まるかに注目です。
LINEヤフーコマースが高成長

事業別の商品取扱高は以下の通りです。
ZOZOTOWN事業:5166億円(+5.0%)
LINEヤフーコマース:789億円(+13.4%)
ZOZOTOWN本体も成長していますが、LINEヤフーコマースは二桁成長を続けています。
Yahoo!ショッピングやPayPayのキャンペーンを通じて、自社サイトだけでは届きにくいユーザーを獲得できており、LINEヤフー経済圏との連携が成長に寄与しています。
一方で、大型のポイント施策による影響も受けますから、販促を続けながら収益性を維持できるかには注意が必要です。
物流効率化で販促費の増加を吸収

購入者数を増やすため、広告やポイントを合計した実質プロモーション費用は約60億円増加しました。
それでも増益となったのは、商品取扱高の増加に加えて、倉庫内の作業効率向上や配送会社との取引条件改善によって、物流関連費を抑えられたためです。
現在のZOZOは、物流効率化で生み出した利益を顧客獲得へ再投資することで成長しています。
今後も販促費をかけながら、物流効率化によって収益性を維持できるかがポイントです。
物流拠点の自動化

ちなみに、ZOZOは2028年10月の本格稼働を予定する「ZOZOBASE習志野3」の開設も進めています。
この物流拠点では約50%の省人化を目指しています。
人手不足や人件費上昇が進む中で、商品取扱高を拡大しても物流コストが同じ割合で増加しない体制を作ろうとしています。
この取り組みの進捗は顧客獲得にも効いてきますから、注目です。
成長戦略
最後に成長戦略にも少し触れていくと、ZOZOは2030年3月期に、調整後EBITA900億円を目指す中期経営計画を発表しています。
2026年3月期の調整後EBITAは727億円ですから、4年間で約24%の増加を目指す計画です。
そのための成長領域としては以下の3つを掲げています。
①More Fashion領域:ZOZOTOWNやLINEヤフーコマースなどの国内既存事業
2030年3月期の調整後EBITA目標:800億円
②Near Fashion領域:香水や化粧品など、国内のファッション周辺事業
同:50億円
③Global領域:LYSTやZOZOFITを中心とする海外事業
同:50億円
ZOZOTOWNをさらに強化しながら、ZOZOTOWN以外の新たな収益柱を育てる方針です。
目標の達成には新規事業の拡大も重要になりますから、既存事業の動向だけではなくファッション周辺領域や海外事業がしっかり伸びているかも注目です。
まとめ
ということでZOZOは、国内ファッションEC市場の拡大を取り込み、この10年間で商品取扱高、売上高、利益を大きく伸ばしてきました。
コロナ禍以降はECへのデジタルシフトやLINEヤフー経済圏の活用によって成長が続き、直近でも購入者数は大きく増加しています。
一方で、1人当たりの購入金額や購入点数は減少しており、国内の既存事業は高成長から安定成長の段階へ移行しつつあります。
今後はZOZOTOWNの成長だけでなく、物流自動化によって収益性を維持できるか、1300万人の顧客基盤をファッション周辺事業へ活用できるか、そしてLYSTを中心とした海外事業を黒字化できるかが重要です。
ZOZOは、ZOZOTOWN単体の成長を見る企業から、ZOZOTOWNで築いた顧客・データ・物流・資金を活用し、新たな市場でも収益を作れるかを見る企業へ変化しているということです。
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