医療業界編:テルモ【4543】医療機器メーカーの成長がなぜ続いているのか解説

日経平均採用の全銘柄の企業分析を毎年お届けするニュースレター。今回取り上げるのはテルモ株式会社です。テルモは、体温計や血圧計などでも知られていますが、現在の主力はそれだけではありません。
むしろ業績面で見ると、心臓や血管の治療に使われる医療機器、血液や細胞関連の医療機器など、グローバルで展開する医療機器メーカーとしての側面が非常に大きい企業です。
妄想する決算 2026.07.23
誰でも

事業内容

それでは早速、事業内容から見ていきます。

医療関連のため不確かな情報は提供できませんので、具体的な製品の内容は避けますが、テルモの主な事業は以下の4つです。

①C&V(心臓血管):心臓・血管・脳血管といった、非常に高度な医療領域で使われる製品を扱う事業

・TIS(インターベンショナルシステムズ):心臓や下肢血管の病気やがんに対して、カテーテルを使ってする治療(血管内カテーテル治療)に関連する製品
・TN(ニューロ):脳血管領域、脳動脈瘤や脳梗塞などに対する血管内治療デバイスなど
・TCV(カーディオバスキュラー):人工心肺装置や人工肺など、心臓手術などで用いられる製品を扱っています。
・TA(アオルティック):大動脈瘤の治療などに使われる人工血管やステントグラフトなど

②メディカルケアソリューションズ:医療ケアやライフケアに使われる製品

・HCS(ホスピタルケアソリューション):輸液ポンプ、注射器、輸液剤、手指消毒液など
・LCS(ライフケアソリューション):血糖自己測定器、電子血圧計、電子体温計など
・PS(ファーマシューティカルソリューション):製薬企業向けの薬剤投与デバイスや、CDMO関連の事業など

③血液・細胞テクノロジーカンパニー:血液バッグや成分採血システム、血液自動製剤システム、細胞増殖システムなど血液や細胞関連の製品

④オーガンテクノロジーズ事業:肝移植に関連する事業

・2025年に買収を完了したOrganOx社の事業

このようにテルモは
・心臓血管領域
・医療現場向け製品
・血液、細胞関連製品
・臓器移植関連事業
などの様々な医療製品をグローバルに展開する医療機器メーカーとなっています。

構成比

続いて、事業別の規模を見ていきます。

OrganOx社が2025年10月の買収で、それを含んだ正確な構成比が無いため2027年3月期の見通しで見ていきます。

売上構成
・心臓血管:7340億円
・メディカルケアソリューションズ:2343億円
・血液・細胞テクノロジー:2459億円
・オーガンテクノロジーズ:255億円

調整後営業利益
・心臓血管:1960億円
・メディカルケアソリューションズ:244億円
・血液・細胞テクノロジー:385億円
・オーガンテクノロジーズ:51億円

売上・利益共に、心臓血管事業が主力となっていることが分かります。
利益率に関しても他の事業が10%台なのに対して27%と非常に収益性の高い事業となっており、基本的には心臓血管事業に左右されやすい企業となっています。

また、心臓血管領域のように高度な医療現場で使われる製品は、性能だけでなく安全性や現場での信頼、医師の習熟なども重要になります。

日用品のように価格だけで簡単に切り替わる製品ではないため、いったん現場で支持されると比較的安定した需要が期待できます。
主力事業で安定した業績が期待されるということです。

また、血液・細胞テクノロジーも近年は、成長し収益性も改善しています。2026年3月期の調整後営業利益率は15%となっており、これは以前と比べてかなり収益性が高まってきています。

つまり、テルモは心臓血管カンパニーを主力としつつ、血液・細胞テクノロジーも成長と収益性改善が進んでいる企業だと分かります。

続いて、地域別の売上構成も見ていきましょう。

2026年3月期の地域別売上構成は以下の通りです。

・米州:39%
・欧州:21%
・日本:20%
・中国:8%
・アジア他:12%

最も大きいのが米州で、全体の4割近くを占めています。
続いて欧州、日本がそれぞれ2割程度、中国は8%、アジア他が12%という構成です。

医療機器は、医療体制が整っていて、高度な治療が行われる地域ほど需要が大きくなりますから、先進国の市場がメインです。

今後も、先進国の各国では高齢化に伴い高度な治療の需要は増加が見込まれていますから、米国を中心とした先進国市場で伸びていることが、重要なポイントの1つになります。

また、海外比率が高いためこのように為替の影響も受けます。
為替の動向にも注意して見ていく必要がある企業です。

業績の推移

続いて、業績の推移を見ていきましょう。

ここ10年ほどをみてもコロナ禍での一時的な停滞はありつつも、近年は増収増益傾向での成長が続いていることが分かります。

というのも、医療機器は高齢化や医療の高度化によって需要が伸びやすい分野です。

そしてテルモの主力の心臓や血管の治療は、特に高齢化とともに需要が増えやすい領域です。
加えて、テルモが取り扱うカテーテル治療のような、体への負担を抑えやすい治療方法は、医療の高度化とともに拡大しており、今後も拡大が期待されています。


以前のテルモは医療現場向けの製品などを扱うメディカルケアソリューションズが中心的な事業でしたが、心臓血管領域のような成長性の高い領域に注力したことで、グローバルでの成長を続け現在は中心事業となっています。

心臓血管という成長領域に注力してきたことが、テルモの長期的な成長を支えてきたわけです。

今後も市場の成長が期待されていますから、今後も拡大が期待されます。

直近の業績。

続いて直近の2026年3月期の業績はもう少し詳しく見ていきましょう。

売上収益:1兆1319億円(+9%)
営業利益:1763億円(+12%)
調整後営業利益:2194億円(+8%)
当期利益:1359億円(+16%)

増収増益傾向が続き、通期の売上収益と営業利益は過去最高となっています。

医療機器という安定需要が期待される事業でありながら、しっかりと成長も続いている状況です。

営業利益の要因を見ていくと、販売数量の増加だけではなく価格政策によってもコスト増を吸収していることにあるとしています。

2026年3月期は、決して追い風だけだったわけではありません。

それこそトランプ関税の影響は大きく、▲121億円の影響がありました。
ですが、価格政策で+146億円の効果があったとしておりその影響を打ち返す事が出来ています。

また、医療機器メーカーは成長のためには研究開発や販売体制の強化が必要です。
つまり、売上が伸びても、同時にコストも増えやすくインフレ下ではなおさらです。
加えて2026年3月期は、買収関連費用や事業ポートフォリオ見直しに関する費用を中心に、一時費用を488億円計上しました。

ですが、その中でも価格政策や事業拡大によって増益を達成していますから、事業の堅調さが分かります。

続いて、もう少し詳しくセグメント別の調整後営業利益の前期比も見ていきます。

・心臓血管:+93億円
・メディカルケアソリューションズ:+22億円
・血液・細胞テクノロジー:+81億円

心臓血管事業と血液・細胞テクノロジーが特に好調だと分かります。

心臓血管領域で、特に好調だったのがカテーテル治療関連製品を扱うTISです。

主力の北米では為替影響を除いても二桁成長が続いており、物量の増加に加えて価格改定の効果も出ているとしています。

値上げをしても販売が増えている状況ですから、製品が需要を高めていることが分かります。
先ほども触れましたが、手術などに使われる製品は信用が重要で、頻繁に入れ替わりが起きるものではありませんから、主力の北米でしっかり支持されていると考えられます。

重要な北米市場の取り組みは成果を見せているということです。

さらに、脳動脈瘤の治療製品などを扱うニューロ領域も好調です。
中国では集中購買制度によって販路が拡大し、日本では脳動脈瘤の治療製品群が好調に推移したとしています。

つまり、主力の心臓血管カンパニーでは、北米のTISが大きく伸び、ニューロも成長しているということです。

主力事業が市場の成長を捉えて成長しており、今後も堅調な業績が期待されます。

もう1つ好調だった血液・細胞テクノロジーでは、グローバルブラッドソリューションが売上を牽引したとしています。

北米では、血液自動製剤システムのReveosが好調で、原料血漿採取システムのRikaも大幅に増収となっています。
アジアではReveosの大型テンダー獲得があったとしています。

この事業でも主力の北米を中心にしっかり事業の拡大が出来ているということです。
繰り返しになりますが、日用品ではなくこういった手術などに使われる製品は信用が重要で切り替えが頻繁に起きる製品ではありませんから、今後も堅調な業績が期待されます。

また、血液・細胞テクノロジーカンパニーは、以前は心臓血管カンパニーと比べて収益性が低い事業でした。

ですが直近では、売上が拡大し利益率も改善しています。

テルモの成長は心臓血管カンパニーに大きく依存していますが、血液・細胞テクノロジーの成長と収益性改善が進めば、全社の成長ドライバーが増えることになります。

今後もこの事業が収益性を高めながら成長していけるかは重要なポイントになりますから注目です。

新たな成長要素:オーガンテクノロジーズ

さらに、テルモは2025年にOrganOx社の買収を完了し、同社の事業をオーガンテクノロジーズ事業として展開しています。

この事業は肝移植に関連する事業で、肝臓移植件数の増加や顧客基盤の拡大によって売上成長が続いています。

2026年3月期の第4四半期では、売上収益は前年比+48%で51億円、調整後営業利益11億円となりました。調整後営業利益率は21%で、高収益事業です。

まだ全社規模から見ると小さいですが、2027年3月期からは通期に渡って業績へ貢献しますし、事業自体もポテンシャルが大きいとしており、高成長・高収益の新事業として注目です。

2027年3月期の業績予想

このように事業自体が堅調な状況で、M&Aによる効果も期待される中で、2027年3月期の業績予想は以下の通りで売上・利益ともに過去最高を見込んでいます。。

売上収益:1兆2390億円(+9%)
営業利益:2245億円(+27%)
調整後営業利益:2615億円(+19%)
当期利益:1653億円(+22%)

利益面が特に大きく伸びる見通しですが、これは既存事業の成長に加えて、先ほど見た一時費用の減少も見込んでいるためです。

2026年3月期は488億円だった一時費用が、2027年3月期には370億円まで減少する見通しです。

さらに、売上増加、価格改定、一時費用の剥落、事業再編によるコスト減などがプラスに働く見通しです。

すでに、米国関税や中東情勢に起因する原材料コスト上昇を前提に織り込んでいるとしていますから、基本的には成長が続くと考えられます。

成長戦略

最後に、テルモの主力事業の成長戦略にも触れていきます。

まず、心臓血管領域では、TIS事業で新製品の投入を進めていきます。

テルモは、安定したアクセスビジネスを基盤としながら、治療デバイスでの成長を狙っています。

特に今後は、画像診断や治療支援に関わる製品、ラディアル手技に対応した製品、末梢血管向け製品などの展開が進んでいこうとしています。

ここで新製品を投入し、北米を中心に拡販が進めば、引き続き成長が期待できますから注目です。

次に、血液・細胞テクノロジーです。

この事業では、Reveosの地域拡大や、血漿関連製品の拡大、さらにAIや自動化によるオペレーション改善を進めていく方針です。

血液センター向けの製品は、一度導入されると継続的な関係が期待される事業でもあります。

地域拡大と収益性改善が進めば、心臓血管に次ぐ成長の柱となる可能性がありますからこちらにも注目です。

まとめ

ということでテルモは、カテーテル治療関連製品や脳血管領域、人工心肺関連製品、人工血管などを扱う心臓血管領域を主力とする医療機器メーカーです。

高度な医療現場で使われる製品は、価格だけで簡単に切り替わるものではなく、安全性や現場での信頼も重要です。そのため、主力事業では比較的安定した需要が期待できます。

さらに、先進国を中心に高齢化が進む中で、高度医療への需要は今後も拡大が見込まれます。直近でも北米を中心に主力の心臓血管領域が成長しており、価格改定を行いながら販売数量も伸びている点を見ると、事業はかなり堅調です。

さらに、血液・細胞テクノロジーの収益性改善、そして新たに加わったオーガンテクノロジーズ事業の拡大も期待されます。

こういった状況ですから、企業としては成長が続く事が期待できると考えられます。

とはいえ、どれだけの成長が期待出来るのか、収益性は維持できるのかというのはポイントになります。

そのため、直近の成長を大きく牽引しているのは米州でさらに成長を続けられるのかが重要です。
特に、北米での拡販には人員増強や研究開発費も必要です。
拡大のためのコスト負担で収益性の悪化が起きる可能性がありますから、売上成長とコスト増のバランスは注目していく必要があります。

加えて、価格政策によって関税や原材料高、賃上げといったコスト増を吸収し続けられるかもポイントになりますから注目です。

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